とある魔術と派遣会社(アストラル)
1・事の起こり

 暑い夏も終わりに近づき、初秋の風が吹き始めたある土曜日。

 東京都西部には、最先端の教育機関や研究機関が集まった、学園都市と呼ばれる都市がある。そこに住むとある少年がこう言った。
「不幸だ…」
 彼の名を「上条当麻」といい、右手にはあらゆる異能の力を打ち消す"幻想殺し”の持ち主でもある。

 さて、こう言うに至った経緯だが、近所で「おいしい玉子」一パック130円が98円で売られていたので全力で走り、閉店間際の店に滑り込んで、ラスト一パックをゲット。上機嫌に帰っている途中で、顔面に公園で遊んでいた子供のフライングディスクがぶつかり落としてしまった次第だ。
「不幸だ…」
 落とした「おいしい玉子」(98円)の前でもう一度言う。彼は”幻想殺し”のため、幸運を消されてしまうのであった。


 彼は「おいしい玉子」(98円)を落としたことにショックを受けながらも、諦めて自分の学生寮に帰ることにする。
 彼の学生寮はお世辞にも綺麗とは言えず、非常に古かった。エレベーターなる便利な機具ももちろんなく、階段を上る。
 「お帰りー、とうま。」
 そういって扉を開けた彼に言ったのは、修道服を着た白いシスターだった。彼女の服には金の刺繍が入っており、ティーカップを思い起こさせる。ただ、ちょっと変わっているのが、安全ピンで服が繋ぎとめられている。
これは上条が起こした事件に関わりがあったりする。
 「今日のご飯なに?」
 「親子丼の予定でしたが、不慮の事故のため鳥丼になりました。」
 えー、親子丼が良いー、とか言ってる腹ペコシスターを無視して料理を作り始める。
 さて、もう食えるだろう、と言うときにインターホンがなった。
「誰だよ、今から飯だぜってときに来るやつは。」
 不満たらたらで髪上は玄関へと向かう。そこには上条の隣人で、実は<必要悪の教会> と学園都市の多重スパイだったりする、土御門元春であった。
「土御門、悪いがあとにしてくれ。俺たちは今から昼食を…」
「禁書目録と一緒に学園都市を出るぞ。」
「は、意味わかんないんですけど。」
「説明は後だにゃー、カミヤン。とりあえず学園都市を出るぞ。」
 そういうと土御門は、無理矢理上条達を連れ出し、いつの間にか停まっていたタクシーに乗せた。
 タクシーに乗せられながら上条はふと思った。
「ちょっと待て、俺達は外出届を出してねぇからゲートでつかまるだろ!」

 学園都市では内部技術を外に漏らさせないために学園都市の外に出る際には許可を申請しなければならない。もちろん上条たちは突然外に出るので許可を申請している訳がない。

 しかしゲートを通ってみると何も起こらなかった。
「カミヤン、なんか言ったか?」
「いえ、何でもございません。」
 こいつはいったいウラで何をしてるのかわからない男である。
「と〜う〜ま〜」
 腹をすかせてかなりお怒りの純白シスターさんが牙を出してガチガチいわせていた。
「ちょっ、待って下さいインデックスさん!
あなた、ライオンみたいに唸ってますよ!土御門!何で俺らは連れてこられたんだ!」
「今から説明するぜい。」

そう言って土御門は紙を出してきた。
 襲ってくるインデックスをかわしながらそれを受け取った。
「…すみませんが、ワタクシ上条さんは英語が読めませぬ。」
「そこにはなカミヤン、ロシア正教が学園都市を攻撃する旨が書いてあるんだにゃー。」
「何だって!この前オリアナの件があったばかりじゃないか。」
「やつらもまだ諦めていないみたいなんだにゃー。」
「でもなんで今回はインデックスをつれてきたんだ?」
「どうやら敵は禁書目録を使うみたいなんだぜい。」
 インデックスの頭には十万三千冊の魔導書が入っている。それを使えば大方の魔術の使用が可能だろう。

「大体はわかった。で、これから俺らはどこへ行くんだ?」
「ここだにゃー」
 そういって土御門は一つの名刺を差し出してきた。
そこにはこう書かれていた。
 <魔法使い派遣会社アストラル
      あなたのご要望にあった魔法使いをお貸しします。>
今回はここまで。2章をお楽しみに。
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